研究について
熊本県中学校教育研究会社会科部会研究部
研究主題
民主的な国家・社会の形成者に必要な資質・能力を社会科の探求
~子どもの素朴知の変容を促す授業デザインの工夫~
主題設定の理由
(1)研究主題設定の経緯
- ①なぜ「民主的な国家・社会の形成者」を掲げるのか
世界の情勢を見ると、保護貿易主義や自国第一主義など排他的な風潮が広まり、社会の分断が起こっている。この解決には、民主的な対話を重ねて打開策を見出していかなければならない。 「民主主義の危機」が叫ばれている現代において、もう一度民主主義を見つめ直し、私たち社会科教師が原点にかえって研究を進めるために、研究主題に掲げることにした。 - ②社会科と民主的な国家・社会の形成者を育てること
我々教師の使命は「民主的な国家・社会の形成者」を育てることである。なぜなら、教育基本法や社会科の学習指導要領において、「民主的な国家・社会の形成者」が教育の目的や社会科の目標として掲げられているからである。 つまり、子どもたちが社会科を学ぶ目的は「国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者」となるためであるといえる。 そもそも、戦後発足した社会科は、民主主義社会の形成とその主体(市民)の育成を重視してつくられた。民主主義を見つめ直し、「資質・能力」の育成が求められる昨今だからこそ、子どもたちが「なぜ社会科を学ぶのか」という目的意識に立ち返って研究主題を設定した。 (2)民主的な国家・社会の形成者に必要な資質・能力とは何か
本研究会では、熊本大学教育学部教授の藤瀬泰司氏が提唱している「民主主義の担い手の育成」を参考に、社会科において育むべき資質・能力を「民主的な国家・社会の形成者に必要な資質・能力」とし、具体的には次のようにとらえる。
自分が生きている社会の問題を考えるとき、自分の生活とのかかわりや利害などを踏まえて意思決定するだけでなく、同じ社会に生きる多様な立場の人々にも目を向けることが民主的であることは言うまでもない。 子どもたちが民主的な国家・社会の形成者になるには、自分が良いと思う解決策や行動が、他者の生活や利害にどのような影響を及ぼすかについても考えさせていくことが大切である。さらに歴史を踏まえ、世代を超えた他者の立場を考慮し、よりよい社会をつくろうとする姿勢や態度も含めた社会問題の民主的な解決を図ろうとする資質・能力こそが、「民主的な国家・社会の形成者に必要な資質・能力」であると考える。
よりよい社会を作り出すために、社会の問題に気付き、
多様な他者と共に社会問題の解決に向かう態度および公正に判断する力
多様な他者と共に社会問題の解決に向かう態度および公正に判断する力